レッド・メモリアル Episode03 第1章


γ0080年4月5日 4:39 P.M.
《プロタゴラス市内》 53丁目

「ほう、ジョニー・ウォーデンはやはり『能力者』だったか。我々がマークしていた通りだ」
 ジョニーが通り抜けていったという、塀を見つめ、リーは何も感情の篭っていないような声で
そう言っていた。彼が見つめる塀は、硬いコンクリートの塀で、とても人が通り抜けられるように
はできていない。
 だがセリアに言わせれば、ジョニーは確かにこの塀を、まるで柔らかい泥でできた壁を通り
ぬけるかのように通過していったのだと言う。そんな事は常人にはできない。何の痕跡も残さ
ず塀を通過する事など。
 あるものと言えば、人の拳大ほどの大きさに抉れたへこみだけた。それは、ついさっき付けら
れたもので、セリアが殴ったものだという事は、リーにもすぐに分かっていた。
「やはり、『能力者』だった。っていう事は、あなた達は、あいつが『能力者』だってことを、既に
知っていたのね?」
 リーのすぐ側に立ったセリアが言う。彼女の目は疑いも露に、リーへと向けられている。
「確証があったわけではない。それにそもそも、ジョニー・ウォーデンが、我々の本来の目的で
はないのだ」
「はあ?それってどういう事よ?」
 冷静なリーに対して、セリアはまだジョニーを追っていた時の興奮が冷めやっていない。いつ
誰かを殴りだしても不思議ではないほどに。
「たかが街のチンピラ一人を追うために、我々軍が動く事はない。むしろ、奴が接触した者達
の方が重要だ」
 リーは塀からセリアの方へと目線を向け、そのように言った。
「誰なの?あいつらは?見る限り、ジョニー達と今までつるんでいた奴らと同じには見えなかっ
たわ。あなたの張らせた包囲網も、簡単に見破っていたようだけれども?」
 セリアは半分、皮肉るように言った。だがリーはそんな事をまるで気にもしていないようだ。
「現在。沿岸警備隊に連絡し、付近の海岸と海を捜索中だ。だが、見つかるという確証はな
い。だから私は、本部に捕まえたジョニーの部下を連行し尋問させる。そうすれば、ジョニーが
一体、誰と接触し、そして何を取引しようとしていたのかが分かるだろう?」
「私は蚊帳の外というわけね?」
 リーの目を見つめ、セリアは言った。
「いいや違う。結局の所、この状態では、あの船でやって来た奴らを発見するためには、ジョニ
ー・ウォーデンを見つけることが、一番手っ取り早いかもしれん」
 リーは遠くの方を見つめ、そのように言う。セリアは、そんな彼の判断が不満だったため、す
ぐに口に言葉が出てきた。
「あいつがどこに行ったか、何て私には分からないわよ。今頃海外へと高飛びしようとしている
かもしれないわ」
「だったら空港を捜索してみろ。案外簡単に見つかるかもな?」
 リーはそのように言い放ち、セリアから離れていった。多分、自分が呼び寄せた部隊の退院
と一緒に本部へと戻るためだ。
 彼の言動が無責任なものだと感じたセリアは、思わず言い放つ。
「あんたね!私は呼ばれてここに来ているの。本当ならば今すぐに辞めてやったって良いわ!
だからね、人使いを荒くしないでよ!」
 彼女の大声は港に響き渡り、数人の武装部隊の隊員達を振り返らせたが、リーは振り返ら
なかった。彼は、まるでセリアの言った言葉など聞えていないかのように、さっさとこの場を後
にしてしまう。
「全く、何なのよ、あいつ」
 と、愚痴交じりにセリアが話しかけたのは、さっきからリーと一緒に行動していた、デールズと
いう、若い軍の捜査官だった。
「その、我々も良く知らないんですよ。トルーマン少佐の事は。急に国防省から、うちの空軍基
地に移籍してきたみたいなんで」
 デールズは、セリアやリーよりもさらに高い身長を持っていたが、話し方はあまり堂々として
いない、むしろ新人のようだ。長身ではあったものの、軍人特有のがっしりとした体躯でもなか
った。
「国防省の、どの部署にいたって言うの?」
 話しかけてきたデールズの方を振り向き、セリアが尋ねる。
「秘密作戦司令部とか、おっしゃっていました。自分も、あまりその部隊の事については知らな
いのですが」
「じゃあ、あいつはそれよりも前はどこにいたの?」
 セリアは、リーに話しかけていた時とほとんど変わらない態度のまま、デールズに迫った。
「それは、自分も聞いていません。ただ、士官学校を出ていらっしゃるらしく、自分も通っていま
した、士官学校の内部事情にはずいぶん詳しいようですね」
「ああそう。でもね。どこかの実戦部隊か、現場で作戦に従事していない限り、現場捜査は任
せられないのよ。あのリー・トルーマンも、どこかで、現場捜査はしているはずなのよ。それと、
あいつの態度と作戦の動かし方からして、あまり、綺麗な捜査はしてきていないみたいね」
 最初の部分は疑わしく、そして最後の部分を悪戯っぽくセリアは言って見せた。デールズは
彼女が言いたい事が良く理解できなかったようだが、
「は、はあ?」
「私達も、空軍基地の本部に戻るわよ。しばらくは、この作戦に従事していると、あなたから、リ
ーに言って頂戴。それと、私もまだ調べなきゃあならないことがあるってね」
 そうデールズに言ったセリアは、生きるか、死ぬかの潜入捜査の直後だというのに、まるでダ
ンスホールに向うダンサーのような足取りで、リー達部隊の向った方へと戻っていくのだった。



《プロタゴラス空軍基地》情報資料部
11:31 P.M.



 作戦のあった日の夜。セリアは臨時の職員として、空軍基地内の宿舎の個室を割り当てられ
ていたが、こっそりと抜け出し、ある場所へと向った。
 元々、セリアは、この空軍基地に所属しており、実戦部隊から、特殊部隊、そして、最後に就
任した特別捜査官の任まで全てを過ごしてきていたのだ。基地の中の構造は熟知していたし、
警備も、彼女が退任する時までのものだったら全て把握している。
 だから、宿舎から情報資料部までの道程も覚えていたし、そこまでどう人目に付かないように
移動していけるのかも把握していた。
 セリアは、一時的に有効な空軍基地のパスを持っている。それは、厳密にはこの空軍基地に
所属している者として扱われ、きちんと大尉(それは、セリアがかつて特別捜査官として就任し
ていた時の階級)という階級を示す。
 だがそれは形式的なものであって、セリアは今ではただの客でしかない。彼女がうろうろして
いてはあまりに目立つ。
 そもそも、長い金髪で、女優のような容姿を持っていた彼女だったから、軍の基地のような場
所では、あまりにその存在が目立つのだ。
 だがセリアは、誰の目にも留まる事無く、資料室のある棟にまでやって来ていた。空軍基地
のデータを管理しているデータ管理センターが、資料室を構えている棟で、本部とも距離は近
い。
 セリアは人目を引く事を警戒し、表玄関から入ることを避けた。裏口からならば、警備がいな
いが、そこは頑丈な電子ロックで閉じられている。裏口から内部に侵入するためには、カードキ
ーが必要だ。それも将校クラスの。
 だからセリアは、裏口からデータ管理センターへと入った事は無かったのだが、そのからくり
だけは知っていた。
 セリアは、裏口の電子ロックのかけられた扉を前にし、携帯電話を取り出してある番号をプッ
シュした。
 すぐにある人物へと電話が繋がる。
「はい、もしもし?」
 随分と眠そうな声で、女の声が聞えてきた。まだ若い女の声だったが、眠そうな声が、そんな
声の魅力を台無しにしてしまっているかのようである。
(もしもし、フェイリン?こんな時間に悪いんだけれども、どうしてもお願いしたい事があるのよ)
 セリアは電話で話しつつも、周囲の様子を警戒しながら話していた。
「セリア。久しぶりに電話をかけてきて、いきなりお願い事?もう、わたしにお願いなんてするこ
と、無いって言っていなかったっけ?」
 セリアが、フェイリンと呼んだ女は、まだ眠そうな声で話してきている。だがセリアは構わず話
を続けた。
「この電話にスクランブルはかけられる?」
「スクランブル?一体どうしてそんなものを?」
 フェイリンに質問されてしまったが、セリアは良い言い訳や嘘が思いつかなかった。本当の事
を話さなければならないだろう。
「今、軍の基地からかけているの。私の元職場の空軍基地。それで、あなたとの連絡は軍に傍
受されるわけにはいかないから、スクランブルをかけて欲しいの」
 少しの間。フェイリンは何を考えているのだろうか。
「分かった。オーケー。あなたの現役時代と同じにして欲しいって訳なのね。でも、軍は辞めた
って言ったでしょ?どうしてまた軍の基地になんかいたりするの?」
 セリアの耳の向こうから、聞えて来るキーボードの音。さっそくフェイリンは携帯電話にスクラ
ンブルをかけてくれているようだ。
「ちょっと、元職場から招待があってね。パーティーよ」
 皮肉めいた言い訳を考えて、セリアは待っている間に答えた。
「へええ、それはよかったわね?もう携帯にはスクランブルがかかっているわよ。ところで、わ
たしに電話をかけてきたっていう事は、何かをして欲しいんでしょ?」
「ええ、この基地のデータ管理センターに侵入したいの。裏口からね。私の一時的なパスだけじ
ゃあ、裏口からは入れないから」
「表玄関から入ればいいじゃあない。だってあなたは、ゲストなんでしょ…?」
 さっきの眠気に包まれてしまった声はどこへ行ってしまったのか、フェイリンは好奇心に満ち
溢れたかのような声でセリアに話しかけてくる。
「ちょっと訳アリでね。誰にも知られたくないのよ。ここのデータ管理センターのシステムには侵
入できるでしょ?」
「待っていて」
 フェイリンが電話口でそう言った後、一分ほどの時間が掛かった。
 本来ならば、軍のデータ管理システムは、ハッキングなどできない代物だ。国の安全に関わ
るほどのシステムだから、万が一でも、ハッカーに侵入されてしまうことがあってはならない。
 そして、ハッカーが、軍のシステムに侵入できるという事は、テロリストも同様にして、このシス
テムに侵入できるという事でもあったからだ。
「できたわ。以前、あなたに教えてもらったコードを使えば、簡単にね」
 フェイリンも、セリアが認めるほどの優秀なハッカーではあったが、やはり、一ハッカーに過ぎ
ない。 『タレス公国軍』のシステムの中核に侵入することなど、彼女でさえできない。しかしな
がら、内部からセリアが手引きをすることができれば別だった。
「あなたの持っているパスで、その建物の裏口から侵入できるはずだけれども」
 そうフェイリンが言ってくるなり、すかさずセリアは行動を開始した。データ管理センターの裏
口に素早く近づくと、自分の持っているパスをスロットへと挿入した。
「ああ、やっちゃった」
 悪戯っぽい声が、携帯電話の中から聞えて来る。それを聞いて聞かずか、セリアはさっさと
建物の中へと入った。
「知っているでしょうけれども、パスで侵入したっていう事は、その管理センターのシステムの記
録に残るのよ。あなたのレベルじゃあ、そのパスでは侵入できないはずだから、きっと怪しまれ
るわね」
「ええ、分かってやってんのよ」
 セリアは管理センターの内部の構造を熟知しており、ほとんど迷わずに進んでいった。彼女
が目指すのは、センターの端末だった。
 一つの部屋の前まで来ると、セリアは再びパスを通して部屋の中へと入り込んだ。部屋の中
はコンピュータシステムを管理するための部屋となっており、幾つかの端末が設置されてい
る。
 その端末の一つ一つは、両手で持てるほどの大きさの箱になっており、幾つかのスイッチが
並んでいる。
 丁度、数十年前まで一般的だった、モバイル端末に似ていた。今ではその端末に画面が付
いていることは無く、セリアがスイッチを押せば、部屋全体の何も無い空間に幾つもの画面が
出現する。
 端末は、部屋全体にその画面を出現させるように設定されていた。個人で使う場合は、目の
前の空間だけに画面を出現させれば良い。特に、公共機関の中や、カフェでこの端末を使うと
きは皆そうしている。
 だが個室や、限られた空間でこの立体光学技術と情報処理技術の結晶を使う場合は、今、
セリアがしようとしているように、部屋全体を仮想空間に切り替えることが出来る。
 部屋全体が、旧時代のスクリーンになるようなものだ。部屋の微妙な凹凸も、上手く隠されて
いて、部屋全てが仮想空間になり、その中に多くの画面が出現する。
 現在においては、仮想空間の中で仕事や、メディアの情報を入手することは当たり前だっ
た。
 限られた画面の中で操作をしていくのではなく、擬似的にだったが、仮想空間は無限の広が
りを見せている。部屋全てをその空間にしてしまうことによって、より直感的に、そして感覚的
に情報の世界に繋がることができるのだ。
 それは、『タレス公国』と『ジュール連邦』の静戦が起こる何年も前からあった技術だが、一般
に広まったのは、十数年前に過ぎない。
 世界規模の戦争が起こるか、起こらないか。世界がそんな緊張に覆われている中でも、この
コンピュータ端末は、センセーショナルかつ華やかに登場し、先進国の一般家庭にまで広まっ
たのだ。
 しかし、軍が管理システムに投入しているコンピュータ端末は、一般家庭にある端末とは比
較にならないほど複雑で時代の先を行っている。静戦や、来る世界規模の戦争に備えて、軍
は、コンピュータ産業から極秘でその技術を提供してもらっている。
 セリアの目の前に現れた、端末の生み出す画面の複雑さ、そして無機質さの中にも、そんな
軍の姿勢が良く現れていた。
 耳にした携帯電話から、思わずフェイリンの感嘆の声が漏れる。
「何度見ても、軍のシステムって凄いわねえ。まあ、わたしの敵じゃあないし、わたしの構築し
たシステムの方が凄いんだけどさ」
 一流のハッカーで、コンピュータ技術者であるフェイリンを唸らせるほどのシステム。この『タ
レス公国』のコンピュータシステムは、セリアが退職してから、さらに一層強化されていたようだ
った。
 軍の管理システムのウィンドウが幾つも出現する。クリアメタリックで空間に現れる平面の画
面は、その使用者によっては、パンクなものにできるし、レトロ調のものをコンピュータ世界に
も導入したい人は、かつての城の窓のようにしてしまうものもいる。
 中には自分で旅行した風景の写真を取り込み、仮想空間でもその世界に迷い込んだかのよ
うに設定している場合も少なくない。
 だが軍のコンピュータではそのようにするわけにはいかないし、無駄な壁紙に容量を割く必
要も無い。
 だからセリアの前に現れて射る画面は、緑のラインで構成された、非常に原始的なコンピュ
ータ画面にも似た仮想空間だった。
 セリアは、軍のコンピュータのトップ画面から移動しようとするが、そこには、IDとパスワード
が必要だった。
「どうするの?あなたのパスワードはすでに失効しているでしょ?それも新たに発行された
の?」
 と、フェイリンが耳の中から尋ねて来る。
「いいえ、失効したままよ。だから、ある人物のIDとパスワードを使おうと思っているの」
 と、セリアは囁くようにフェイリンに言った。
「本部に連絡してでもして、新しいIDを発行してもらえばいいじゃあない。わたしまで駆り出して
面倒な事をしないでさ」
 だがセリアは、フェイリンの言葉を遮るかのように言った。
「今、ここでしようとしている事を、誰にも知られたくないの。上は、私の事を良く知っているから
ね。IDとパスワードを手に入れようとしたら、そのIDで何をやっているか、必ず監視されるわ」
 セリアはそう説明しながらも、部屋の中に現れている画面の前を行ったり来たりしながら、光
が生み出している平面の画面を見つめる。
 それはあくまで仮想空間が生み出している、平面の画面でしかなかったが、まるでセリアの
前に立ち塞がるかのように聳え立っていた。
 壁の真中には、二つの窓だけがあり、その横には、ID、パスワードとだけ現れている。
「それじゃ、どうやって侵入するのよ?適当な奴のIDとパスワードでも使うの?」
「そう。そうするわ。でも適当な奴じゃあなくって、私は、ある人物のIDとパスワードを使って、こ
のコンピュータに侵入したいの」
 そうセリアはフェイリンに言うと、画面前の椅子に腰をかけた。
「ある人物?」
「リー・トルーマンという男が、新しい私の上司でね。彼のIDから侵入しようかと思っているわ」
 セリアがそのように言っても、フェイリンはピンと来ないらしい。だがセリアは椅子の上で腕組
をし、脚をクロスさせて答えていた。
「はあ? でも、IDか、パスワードどちらかが分からないと」
「リー・トルーマンのIDは、『LITTLEBOY44』よ。あいつが、作戦会議をしている時にはっきりと
キーボードの上の指の動きを見させていただいたから」
「分かったわ。そのIDのパスワードを調べれば良いわけね。IDさえ分かっちゃえば、こちらのも
のよ」
 電話の向こうで、フェイリンが、ソフトを起動させているのだろうとセリアは想像する。そのソフ
トは、フェイリンが自作したもので、何の痕跡も残さず、パスワードを調べることが出来る。銀行
の暗証番号から、金庫の番号まで可能なはずだった。
 フェイリン側で入力したのだろう。セリアの目の前にある画面に、隠された状態でパスワード
が流れていく。そのパスワードはセリアも知る事は無い。
「でも、そいつのIDでこのコンピュータにアクセスしていることは、管理センターで分かっちゃう
のよ?本人に知られたら、すぐにばれるわ」
 フェイリンが再び言ってくる。彼女がそう言い終わる前に、セリア側の画面では軍のデータベ
ースへのアクセスが始まっていた。
「大丈夫。本人に知られる前に済む仕事だから。簡単に終わるわよ」
「何を調べるの?このIDのレベルならば、核ミサイルの在り処から、マークしているテロリスト
の情報まで知れるわよ?」
 少し考えた後で、セリアは口を開いた。
「私を今日、パーティーに呼んでくれた人について調べたいの。それこそ、まさにこいつよ」



 データ管理センターの正面玄関には一人の男が現れていた。既に午後11時だったが、軍の
人間は、この時間でも全く昼間と同じような活動をし、24時間体制で軍の作戦に就いている。
故に眠そうな様子も、それを隠そうとする様子も見せない。
 それは、センターの建物に、自分のIDで入ってくる人間も同じだった。
「トルーマン少佐。夜分遅くにいかがなさいましたか?」
 データ管理センターの前で、常に人の出入りをチェックしている当直係が言った。他にも、警
備の作戦についている軍の兵士が2人、武装した状態でそこにはいる。
「セリア・ルーウェンスの姿が見えない。こちらに来ていないか?」
 と、リーがそのサイボーグのような表情を向け、当直係が尋ねた。すると係の者は、まるでリ
ーを安心させるかのように言ってくる。
「いいえ、姿は見ていません。ですが、待てよ?これはおかしい?」
 そんな当直係の態度は、彼の目の前を流れる電子モニターを見た瞬間に消え失せた。
「何がおかしいんだ?」
 リーは、カウンターに身を乗り出し、当直係と共にそのモニターを覗き込んだ。
「リー・トルーマン大佐。あなたは、ここのコンピュータから、すでにデータ管理センターにアクセ
スをしている事になっています」
「何だと?」
 リーは、表情を変えることなく、そう当直係に言い放った。
「既に5分間、アクセスしています。これは、人事部のデータです」
「どこのコンピュータからだ?」
 リーが言い放つと、係りはすぐにチェックした。
「地下1階。データベースの管理室です」
「よしお前達、一緒に来い!私が直接調べる」
 すかさずリーは指示を飛ばし、屈強そうな警備兵2人を伴って、データ管理センター内に入っ
ていった。
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