レッド・メモリアル Episode03 第6章



3:22P.M.


 リー・トルーマンは、《プロタゴラス空軍基地》に戻り、『グリーン・カバー』の潜入捜査報告、オ
ットーの身柄の引渡しをした後、その足で、《プロタゴラス》市内へと戻っていた。
 リーが報告しなければならないのは、軍の上層部相手だけではない、必ず報告しなければな
らない相手がいた。
 今日起きたことだけは、その人物にリーが直接会って話す必要があったのだ。
 《プロタゴラス》市内の河にかけられた橋桁の下。その高級車は停まっていた。黒服のガード
マンが一人達。そこへとやって来たリーを不動の姿勢で待ち構えている。
 まだずきずきと痛む頭を押さえつつ、リーはその高級車に近付いてきた。まるで政府要人
か、企業の重役が乗っていそうな黒塗りの車だった。
「お待ちです」
 黒服の男はそのように言った。そして高級車の後部座席の扉を開く。
 リーは中に乗り込み、後部座席に乗っている一人の男と対面した。車の中は薄暗い上に橋
桁の下にあったから、ますます暗く、車の中に乗っている者達の顔は伺えない。
「あいつらと接触する事ができたようだが?」
 後部座席に座っている男は、真っ先にリーに向って口を開いた。
「ああ、だが奴らの中に、私の記憶を消去することが出来る『能力者』がいてね」
 リーはそう答えた。特に自分の非を認めるつもりもない声でだった。
「それは、恐らく“ブレイン・ウォッシャー”だ。元は我々が管理していた『能力者』だったが、いつ
しか、向こう側につかれてしまったようだ」
 男は、ほぼ完璧なタレス語を話してくるが、訛りが目立つ。明らかに『タレス公国』の人間では
なかった。
「恐らく、“組織”の関与も奴らに知れ渡っている。早急に対処をしなければ」
 リーは相手の男に静かに言った。すると、相手の男は、リーの言った言葉を全て理解してい
るかのように返してきた。
「ああ、間違いなく知れ渡っている。“ブレイン・ウォッシャー”は君の頭に入り込んだとき、同時
に君が我々“組織”側の人間であるという事を知ったのだからな」
「すぐにも奴らは行動する。どうするつもりだ?」
 リーは見えない相手の顔を伺おうとした。
 しばし考慮した後、その男は答えた。
「私はすぐにも現地へと向う。そして、奴らに対処するつもりだ」
「では、私は?」
 後部座席にいる男はリーへと顔を近づけた。少しだけその男の顔の姿が明らかになり、NK
系の中年の男であるという事だけが分かる。
「君は、なすべき対処をしろ。そして、必要になれば、私の元に来い」
「はい」
 リーは男の方は向かず、ただそう答えた。
「今、我々が動かなければ、この世界を救うことはできないだろう」
 車の中の男が発したその言葉が、リーにとっては大きな重みとしてのしかかるのだった。
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―Ep#.04 『罠の連鎖』―

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