レッド・メモリアル Episode18 第6章



 アリエルは無機質な姿をしたビルの一階でシャーリを待った。
 戦争が始まって、首都に戒厳令が敷かれていると言うのはどうやら本当だった。アリエルは
ひっそりとしたビルの中でただ一人、シャーリの到着を待っている。
 このビルは何に使われるビルなのだろうか。まずホテルではない。フロントが無いからだ。だ
が、受付と思われるような場所はあったが、そこに人がいる様子はない。
 全てがひっそりと静まり返っており、更に外の通りからこのビルの中を伺う事はできないよう
になっていた。
 黒い色の壁紙やタイルで覆われているビルは、とても東側の国のビルとは思えないような趣
きだった。これがモダンテイストと呼ばれるものなのだろうか。しかし一方で、まるで外界から秘
密を隠しているかのようなビルだった。
 アリエルがそのだだっ広く、一人でいるにはあまりに不安なビルのロビーで待っていると、そ
こにシャーリが現れた。
 彼女はエレベーターでやって来て、アリエルにとっては妹に当たるレーシー、そして父の部下
と思われる男達を数人連れていた。彼女らは武装をしている。シャーリなど剥き出しのショット
ガンを持っているくらいだった。
 しかし父から聞かされていた言葉を思い出す。何故、シャーリ達がそのような武器を持ってこ
の場へとやって来ているのかという事を。シャーリ達は父の目的を果たさんがために、そのよう
な武装をしているのだ。
 だが、シャーリ達と共に、大型のエレベーターに乗ってきた奇怪な存在。アリエルはそれが目
に付いた。思わず身構えてしまうかのように威圧感の有るような存在だ。
「アリエル。また、会えたわね。そして、どうやらお父様があなたを目覚めさせてくれたって言う
話はすでに聴いているわよ」
 シャーリはそのように言いながらアリエルへと近づいてきた。彼女は剥き出しのショットガンを
持ったまま、アリエルに何をするかと思えば、いきなり抱きついてくるではないか。
 そのような挨拶を交わす文化が世界のどこかにある事を、アリエルは知っていたが、まるで
何かを確かめるかのように、シャーリはアリエルに抱きついてきた。
「あ、あの…」
 もちろん『ジュール連邦』ではそのような挨拶はしない。だからアリエルは戸惑ってしまうのだ
った。
「ふーん。まだ戸惑っているようね。まあ、一週間前はまだ甘かったあんたが、いきなり変わる
なんて、無理な話のようね」
 そのように言いつつ、シャーリはアリエルを抱きしめるのを止めた。
 シャーリと最後に会ってから彼女に何があったのか分からないが、どことなくシャーリの顔に
は陰が差している。この数日の間に一体シャーリの間に何があったというのだろうか。相当な
修羅場か何かを潜りぬけてきたかのようにも見える。
 もう一人、妹のレーシーの方はと言えば、まるで何の変化も無いようだが。
 そして、アリエルにはもう一つ、とても気になっている事があった。
「あの、あれは?」
 機械音、おそらくそれはキャタピラだろう、その音を響かせながら移動してくる大柄な身体。
明らかにその身体は機械だというのに、その動きはまるで生命がそこにあり、生きているかの
ようだった。
 ロボットの存在はアリエルも知っている。東側の国ではまず用いられる事は無いが、西側の
国では積極的に取り入れられている機会だ。
 だがここまで大柄であり、しかも両腕にガトリング砲まで仕込んでいるようなロボットを目の当
たりにするのは、アリエルにとっても始めてだった。
 それがアリエルの方に向かってやってきたので、アリエルは思わず後ずさりをしてしまった。
まるで得体の知れない怪物が自分の方へと迫ってくるかのような迫力だ。
 だが、シャーリはそんな怪物にも似た存在を頼もしげに見上げて言うのだった。
「これはお父様が用意してくださった、私達の兵よ。この前ではどんな軍隊もかなう事は無い。
この場所を守るために、お父様があらかじめ用意してくれたの」
 アリエルはこのようなロボットの存在を見た事も無かった。まず『ジュール連邦』の軍隊が持っ
ているようなものではない。間違いなく、西側の国からよこされたものであるに違いない。
「それはそうと、お父様から聞かされた、例のものだけれども」
 アリエルはその巨大な機械兵器の方は見ないで、シャーリに言った。
「今、この場所に届けられようとしている所なの。上手く行けばすぐにでも、あなたに直結する
事でしょうね」
 そう言いながら、シャーリは自分のこめかみの部分を指差すのだった。それが何を意味して
いるのかはアリエルにも分かる。
「シャーリ。あなたもそうなの?あなたも、頭の中にその、コンピュータみたいなものが入ってい
るの?」
 そのようにアリエルは尋ねる。答えはすでに父から聞いていたけれども、改めてアリエルは確
認したかったのだ。
「そうよ。お父様の子のその頭には生体コンピュータが入っているの。一番いい例がレーシー
ね」
 シャーリはそう言い、レーシーを自分の前へと出すのだった。
「この子の頭の中にももちろん、生体コンピュータが入っていて脳に直結している。って言って
も、コンピュータ自体はとても小さなもので、それこそ指先の大きさほどもないの。それを無線
接続するハードウェアが必要になる。それが無いと、コンピュータは動かないし、私達の脳はた
だ普通の人間と同じように動いているしかない」
「それで、必要になるのが、『レッド・メモリアル』だと?」
 アリエルはそう尋ねた。
「その通り。お父様から聞かされている通りよ。それでね。このレーシーは実はすでに『レッド・
メモリアル』を持っているのよ。この子、機械と融合する事ができる『能力』を持っているから、
何かと都合がいいのよ。レーシー。アリエルに見せてあげなさい」
「はーい」
 するとレーシーは自分の手のひらを差し出した。
 するとそこからは、まるで浮かび上がってくるかのように、赤い棒状のものが姿を見せるのだ
った。それは丁度、コンピュータで使われているメモリーに近い姿をしている。
 アリエルが始めて目にするレッド・メモリアルとは、とても繊細そうなガラスの中に、何かが流
れているかのようなものだった。その流れているものは、機械類の細かなチップか何かだろう
か。絶え間なく動いている事が分かる。
「これが、『レッド・メモリアル』」
 そして父が何よりも欲しているものだ。何故かレーシーだけはそれをすでに持っている。
「この子はいわゆる試験体として選ばれたの。ちょうど都合のいい『能力』を持っている事だし
ね。だからこの子はいつでもコンピュータを使う事無く、ありとあらゆる所にアクセスできる。
 あのロボット兵だって操る事ができるし、このビルの制御をする事も出来てしまう。そしてそれ
だけじゃあない」
 シャーリは悠々とそのように述べる。やがて、彼女は自分の両手を広げて、まるでこの場に
いる全ての者に言い聞かせるかのような口調で悠々と言うのだった。
「何故、お父様が私達を選んだか分かる?そしてわざわざ、多くの女に自分の子供を産ませた
かという事も?
 それは、お父様が『能力者』を求めていたからよ。この『レッド・メモリアル』は人間をコンピュ
ータ化できるだけでなく、『能力者』であるならば、その『能力』をも大幅に高める事ができるし、
更に、自在に制御することだってできてしまう。
 『能力者』と人間の技術が融合するのよ。素晴らしい事だと思わない?」
 シャーリは熱弁した。だが、アリエルにとってはまだ不安だった。自分をコンピュータ化する事
ができるといっても、それがどのような感覚なのか分からない。それに対して恐れを抱いている
のだ。
「怖いかしら、アリエル。でも私は素晴らしい事だと思う。これでまた、お父様が望んでいる世界
に一歩近づくのよ。もう少し、あと少しでそれが実現しようとしているの」
 シャーリは顔を近づけてアリエルに言って来た。どうやらシャーリは恐れというものを全く抱い
ていないようである。
 何かに陶酔してさえいるかのようだった。
「じゃあ、あの、ロボット達は何の為にいるの?」
 アリエルは、ビルの外へと出て行くロボット達の姿を指差して言った。ロボットはどうやらビル
の外にも大勢いるらしく、隊列のようなものをなして外をうろついている。
 ロボット達はまだうろついているだけに過ぎないが、彼らは明らかに戦争の道具だった。何か
が始まればすぐにでも、両腕に付けられた銃機関砲を撃ちだしそうな姿をしている。
「アリエル。この《イースト・ボルベルブイリ・シティ》は、お父様の作る王国の一つとなるの。その
ためには、古い時代のものなんていらない。徹底的に排除されなければならない。
 ここは一つの国になる。だから、外敵からそれを守るための防衛システムは必要になるでし
ょう?」
 シャーリの言った一つの国という言葉で、アリエルは思い出す。それは父が言っていた言葉
だ。彼はこの地に一つの国を作るために活動をしている。しかしアリエルの中にはまだ疑問も
会った。徹底的な排除の為ならば、本当に古い時代のものは全て排除されなければならない
定めにあるのだろうか?
 ロボット達がビルの外に出て行く。戒厳令の影響で全く外には人がいない。しばらくは何事も
起こらないでいて欲しい。アリエルはそう思っていた。
「遅いわね。そろそろ例のものが届くはずなのに」
 シャーリはそのように言って、周囲の様子を見まわしていた。
 また、何かが起ころうとしているのだろうか。

 リー達はロボット達の警備網を掻い潜り、何とかビルの地下から地上へと出る手段を探って
いた。
 エレベーターから外の通路に出る事はできたものの、彼らが逃げ込む事が出来たのは狭い
倉庫のような場所で、そこからはどこにも行く事ができない。行き止まりだった。
「一体どうするっていうのよ?この中で、あのロボット達がいなくなるのを待っているわけ?」
 セリアが皮肉っぽく言う。狭い地下の倉庫の中にいるなど彼女の性には合わないのだろう。
リーはそう思っていた。
「あのロボット達の詳細なデータをダウンロードできないか?」
 リーはそのように尋ねた。尋ねた先はフェイリンとタカフミだった。
「あの、あたしの携帯端末の中にデータが残っていたと思いますけれども、つい2、3日前に、
データが全部飛んじゃって」
 リーは顔をしかめた。組織のアジトに電磁波攻撃があった時の事だ。あの時、セリアとフェイ
リンも近くにいたせいだろう。
「じゃあ、再接続だ。もう一度、あのデータをダウンロードすればいい。『タレス公国軍』のデータ
からダウンロードすれば、あのロボット達のデータが手に入るだろう」
 そのようにタカフミはフェイリンに言うのだが、
「いいやタカフミ、軍ではない、軍が押収した『グリーン・カバー』の情報を検索するんだ。そし
て、その中にあのロボットの強制停止プログラムがあるはずだ」
「ええ、やってみる」
 そう言ってフェイリンは携帯端末を操作し始めた。
「おいおい、押収した証拠っていうのは、軍の機密の一つなんだぜ。それを携帯端末から侵入
して入手するなんて、あんたにできるのか?」
 タカフミが不安そうにそう言うのだが、
「ええ、この端末は、あなた達の組織って言う所から貰ったものですから。多少、使い方に難は
ありますけれども、問題はありませんよ。軍のネットワークには簡単に繋げる事ができますから
…」
 フェイリンは倉庫の中で器用に携帯端末を操作していき、次々と光学画面を展開させていっ
た。
「その携帯端末には、そこまでのソフトは入っていないんだぜ。容量だって限られているんだ」
 タカフミは難を言うのだが、
 フェイリンは素早い手の動きを使って、どんどん空間の光学画面を操作していく。
「ええ、ですから、必要なソフトはどんどんダウンロードして、メモリの拡張ソフトもインストロール
しながら侵入するんです」
 タカフミはそのフェイリンの動きに思わず目を奪われていた。リーも知っているが、タカフミも
かなり腕ききのハッカーなのだが、そんな彼でも目を奪われてしまう事なのだ。
 こんな限られた状況下で、世界の反対側にある国の機密データにアクセスしようとしている。
 やがてフェイリンは一つの画面を発見するのだった。
「ありました。これです。このデータを無線で発信する事ができるようになれば、ロボットに強制
停止命令をプログラムする事ができます」
「何?もう見つけたのか?本当に大丈夫なんだろうな?」
 タカフミが疑り深くフェイリンに向かって言った。
「ええ、それじゃあ見ていて下さいって」
 そう言うなり、フェイリンは倉庫の壁の一方向に向かって、携帯端末をかざして何やら暗号コ
ードらしきものを入力する。それだけだった。
「これで、停止させる事ができました。ふう」
「おいおい、本当かよ」
 更にフェイリンはまた別の方向に向かって、携帯端末をかざして同じような操作をする。
「彼女の言う通りならば本当なんだろう。確認してみる」
 リーはそう言って、倉庫の扉を注意深く開いて、地下の通路の様子を見た。
「どうだ?」
「ロボット達は停止しているようだ。動いていない」
 即座にリーはその状況を確認して、通路の外へと出てみるのだった。
「問題無いようだ」
 先程は、姿を見たとたん、機関砲を発射してきたロボット達が今は何もしてこない。本当にそ
の機能を停止させる事ができたのか。
 タカフミやセリアは恐る恐るといった様子で通路へと出たが、そこには、機関砲を備え付けた
腕をだらんと下げて、沈黙したロボット兵の姿があるだけだった。
「確かに、完全に停止しているようね…」
 セリアはそう言ったものの、まだ警戒を払っていた。いくら沈黙しているとは言え、またすぐに
でも動き出したら攻撃に遭う。
「あたしの実力をなめないでください。これでも軍で雇われていたくらいなんですよ。ロボット兵
の弱点はあくまで機械であると言う事。プログラムで動いているというものなんですから、こちら
から停止命令を出せば、簡単に止める事ができるんです」
 フェイリンは得意げにそのように言うのだった。
「ここから地上に出るの?またエレベーターを使って?あなたのそのプログラムはどの程度使
う事ができるのよ」
 セリアがまだ油断もできないといった様子で、周りの者達に尋ねる。
「このプログラムは半径10mまで有効。あと、停止プログラムを書き込めるのは一回につき一
体までで、それには1、2秒はかかるわ」
 そのフェイリンの言葉にリーは素早く状況を判断した。
「上のビルのロビーには、5、6体のロボット達がいた。それぞれに停止プログラムを書き込ん
でいくのでは、5、6体全てを停止させるまでには時間がかかり過ぎてしまう。あのロボットは戦
車も同然だ。『能力者』である我々でも敵わないだろう」
「いや、その必要は無い」
 リーの言葉を遮ってタカフミが言う。
「どういう事だ?」
 タカフミは携帯端末を持っており、それに画面を表示させていた。
「例の『レッド・メモリアル』はこの地下階層を移動している。さっきの二人組の男達は、この地
下を通って別の所へと向かおうとしているって言う事だ」
 タカフミが見ている画面は追跡装置の画面だ。その画面に表示されている赤いポイントがど
んどん離れていっているのが分かる。
「地下道か何かがあるという事か?」
「それでしたらあたしの『能力』で…。えっと、この地下通路はそのまま、道路の下を通って、そ
のまま隣のビルへと通じているようですよ。黒塗りのビルです」
 フェイリンがじっと廊下の先の方を見つめて、そのように言うのだった。
「隣の、ビル、だと?」
 確認するかのようにタカフミが言った。
「タカフミ。彼女は透視能力者だ。彼女がこの先に通路が見えると言っている。恐らくさっきの
連中はその方向へと向かって逃げたんじゃあないのか?」
 フェイリンの事を知らないタカフミにリーが言う。
「ああ、どうやらそのようだ」
「では後を追うぞ。あれがベロボグの手に渡る前に食い止めたい」
 そのように言って、リーは誰よりも先に走り出した。

「おかしな事になってる」
 肝心の物が到着するのを、隣のビルで待っているアリエルとシャーリ達。その中で、レーシー
がぼそりと言った。
「どうしたの?レーシー?」
 シャーリが彼女に尋ねると、
「地下に配備されているロボットが突然二つ停止したの。停止した理由は、停止プログラムが
書き込まれたからだって。あたし、そんな事していないのに」
 レーシーはそのように不快そうに言うものの、頭の中では何かの操作をしているらしい。
「この戒厳令の中でそんな事ができるような奴は、そうはいないわよね」
 シャーリがそのように言う中でも、レーシーは頭の中で生体コンピュータを使って操作を進め
るのだった。

「ロボットが再起動したみたいだぞ!」
 タカフミが通路を歩きながら、自分達の背後で動き出すロボットの姿を見て言った。
「完全に停止させたんじゃあなかったのか」
 口々にそのように言われてフェイリンは戸惑ったそぶりを見せたが、
「そんな事言われたって。ただあたしは、あのロボットの機能を止めただけで!」
「じゃあなんで動き出している?」
「外部から再起動するように命令されたとしか思えません」
 フェイリンはそのように言って、再び電子パットを取り出したが、
「いや、また止める必要は無い。それよりも先を急がなければならない!」
 リーがそれを止めさせ、彼らは、地下通路の中を進んで行くのだった。

「ロボットを再起動したよ。壊されたわけじゃあなかったから、まだきちんと動く」
 レーシーはそう言って、どうやらロボットと回線を接続しているらしかった。しかしそんな事な
ど、当のレーシー以外には理解できない事だった。
 ただ彼女は『レッド・メモリアル』を使って生体コンピュータを起動させる時、ちょうどそれが埋
め込まれているこめかみの部分を指で叩く癖はある。
「誰がロボットを止めたりしたの?」
 シャーリがそう尋ねる。
「今、ロボットの方のカメラの映像に切り替えているところだから」
 レーシーがそのように言って少しの時間が経ってからだった。
「この通路、どこかな?知っているような気がするけれども。ロボットを止めた連中は、走ってど
こかへと向かっているみたい。どこだろう?」
 レーシーはそう言いながら周囲をうろうろとし始めた。
 その時、アリエル達が待っているビルのホールのエレベーターが開き、そこからシャーリが遣
いに出していた二人の男達が、銀色のケースを持って姿を現した。
「シャーリ様」
 そう言って男が銀色のケースをシャーリの方へと差し出してくる。
 シャーリは待っていたとばかりにその男達の方へと向かっていき、彼らから銀色のケースを
受け取る。
「やっと来たわね。これで間違いないでしょうね」
「え、ええ。間違いありません」
 男は少し戸惑ったようだったが、シャーリはそのスーツケースの中をすぐに開いて中身を確
認した。
 そしてそれを持ったまま、アリエルの方へとやってくる。
「届いたわアリエル。これが『レッド・メモリアル』よ」
そう言ってシャーリがスーツケースの中身をアリエルへと見せようとした時だった。
「分かった!ここの地下道だ!」
 レーシーは突然声を上げて、その場にいた者達を驚かせる。そして更にその矢先だった。再
びエレベーターの扉が開き、その中から銃を構えた男が飛び出してくるのだった。
 すかさずシャーリの部下達はその男の方に向かって、持っていたマシンガンを向ける。
 何者がやってきたのか。シャーリはすぐに状況判断ができなかったが、そのエレベーターに
乗ってきた四人の者達の内、一人の顔を見ただけで状況はすぐに理解できた。
 銃を構えている男をシャーリは知っている。彼女は憶する事無く、その男の方へと近づいてい
った。だが、シャーリが目指していたのはその男の方では無かった。
「ふーん。どこかで見た顔があったかと思えば、こんな所まで追って来ていたのね」
 エレベーターの中から出てきた金髪の女を見つめて、シャーリはそのように言うのだった。
(何を言っているのか分からないわ。リー。こいつらは一体?)
 その金髪の女は、仲間らしき男に向かってそのように言った。
 だがシャーリは、その仲間らしき男が答えるよりも前に、アリエルの方へと向き直った。
「シャーリ。その人達は一体?」
 アリエルはそのように言った。また得体の知らない者達が現れて、その出来事に彼女は戸惑
ってしまう。
「アリエル、これを機にして紹介してあげるわ」
 そしてシャーリはその場で声高らかに言うのだった。
「あなたの本当のママが、わざわざここに来てくれたのよ」
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―Ep#.19 『怒りの日』―

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