レッド・メモリアル Episode15 第5章



ジュール連邦 国会議事堂 地下シェルター

 アリエル達は、重厚な金庫の中にあるかのようなエレベーターを使い、国会議事堂の地下へ
と向かい、やがてエレベーターは到着した。
 リーに言わせれば、ここは国会議事堂地下のシェルターなのであるという。街の地下にこん
な施設があったとは、アリエルにとっても意外だった。だが、全くこの話を聞いた事が無いわけ
ではない。
 戦争に備えて、政府は《ボルベルブイリ》内に、幾つもの核シェルターを用意しているという。
特にどこの国の政府の建物にも、必ずシェルターがあって、有事の際、最高指導者の総書記
や議員などはそこへと避難するのだという。
 だが、自分がまさかそんな所に入る事になるとは。ほんの10日前のアリエルには想像する
事もできない事だった。
 地下シェルターは、コンクリートで塗り固められているが、薄暗くは無い。緊張感ある表情で
職員らしき人々が狭い通路を行き交い、また、重武装のマシンガンを構えた者達が、周囲を警
備で固めている。
 アリエルは落ちつかない。本当に自分がこんな所に来て良いものかと思ってしまう。
 そんな事を察してか、タカフミは言った。
「アリエルさん。安心していい。俺達だってここに入るのは初めてだ。だが、これから会うサンデ
ンスキー議員は、人格者だ。この国の政治家にしては変わっているけどな。何しろ、俺達に協
力するような相手だ。どこかの誰かさんとは違う」
 ちらりとタカフミは、背後から付いてくるストロフの姿を見やった。
「それは俺の事を言っているのか?」
 ストロフはタカフミよりも一回り高い身長を見せつけ、そのように言い放つ。
「さあ、どうだろうな?」
 タカフミがそう言った時、警備員の一人がストロフを止めるのだった。
「何のつもりだ?」
 ストロフがその警備員に語気を強めて言う。
「ストロフ捜査官。あなたはここまでです。あなたは、サンデンスキー議員に会う事にはなってお
りません」
 まるで機械が話すかのように、その警備員はストロフに言うのだった。
「何だと!オレがこいつらをここへと連れてきた。オレでなければそんな事はできなかったんだ
ぞ。それはどういうつもりだ?」
 しかし、警備員はストロフの前に立ちはだかる。
「今は、厳戒態勢中です。議員の方々は、許可された方としかお会いにはなれません」
「俺が、ここまで連れて来たんだ」
 そのようにストロフが言ったが、結局からは通路を先に通してもらう事はできなかった。リーを
先頭にして、アリエルとタカフミは、とある部屋へと通される。そこは地下の執務室となってお
り、ある程度は圧迫感が取り払われ、部屋の中も装飾がされていた。
 その部屋で補佐官と共にリー達を待っていた人物が、サンデンスキー議員だった。
「あなたが、サンデンスキー議員?お初にお目にかかります。わたしは、あなたの支援している
組織の者で…」
 タカフミはわざわざジュール語を使い、サンデンスキー議員に挨拶をするとともに手を差し出
す。議員はそれに応え、タカフミと握手を交わした。
「組織の仲介役とは何度も会っていたが、組織自体のメンバーと出会うのは初めてだ。確か、
あなたはタカフミ・ワタナベという方のはずだ」
 サンデンスキー議員とは、とてものっぽな姿をしていた。背の高いジュール系の人種の中で
も、彼は特に抜きん出て背が高い。その頭は、限られた高さしか無い天井にまで届いてしまい
そうで、アリエルからは見上げるほどの背の高さがあった。
「あなたも、組織の一員?そして、あなたが、アリエル・アルンツェンさん?」
「ええ、私は、リー・トルーマン」
 アリエル達の方を向いてきた議員に対し、リーがそのように答えた。アリエルも、議員の背の
高さに驚きつつ挨拶をした。
「どうも…」
 サンデンスキー議員は、『ジュール連邦』の上院議員だというが、アリエルには見覚えが無か
った。元々が、アリエルはただの高校生でしかなかった。政治など、外の世界で起こっているも
のだとしか思っておらず、10日前の彼女だったら、まさか議事堂のシェルター内で上院議員に
顔通しをするなど想像だにできない。
「挨拶をしたところで、早速だが話を進めたい。ワタナベ氏。あなたによれば、ベロボグ・チェル
ノは間違いなく我が国にテロ攻撃を仕掛けようと考えているのだな?」
 サンデンスキー議員は足早に話を進めた。
「ええ、ほぼ間違いないでしょう。この国に、あなたの支援で造ったアジトも急襲されました。ベ
ロボグ達の狙いは、間違いなくそこにいるアリエル・アルンツェン」
 タカフミがそのように言うと、サンデンスキー議員の他、補佐官やリー達も彼女の方を向いて
くる。
「ほう。この娘さんが」
「ベロボグ・チェルノの娘であり、彼の狙いの一つ」
 リーがアリエルをそう議員に紹介した。アリエルはと言うと、着の身着のままでこの場所まで
やってきた自分を、品定めするかのように見られたくは無かった。あまり心地の良い気分では
無い。
「ワタナベ氏。何故、彼女が狙われているのかを教えてもらいたい。そして、それが今、この国
を襲っている戦争と、どう関係しているのかを話してもらいたい」
 サンデンスキー議員はアリエルの品定めを止め、タカフミに言った。
「そうですね。説明しましょう。だが、時間は少なくなっているかもしれない。説明は、簡潔に要
点だけを伝えます。あなたならば理解してもらえるはずだ」

 一刻ほどの時間、タカフミの説明は続いた。彼の説明に、サンデンスキー議員は顔をしか
め、どのようにしたらよいか、決めかねた様子で部屋の中をうろうろとしていた。
「では、そのベロボグ・チェルノがこの戦争の引き金を引いた。だと。『WNUA』と我が国は、そ
う簡単に動くものではない。まして、『WNUA』側で起こったテロ攻撃についてだって…」
 サンデンスキー議員はそう言ったが、タカフミは彼の言葉に覆いかぶさるかのように言った。
「ベロボグ達にはそれだけの資金力もあった。事もあろうか、この国は、あの慈善団体に最大
限の投資をしていたでしょう。何しろ『タレス公国』の大手軍需企業さえも動かす事ができるほ
どの金を提供していた。ベロボグ自身、この計画には何年もの時間をかけてきているようだ
し、十分可能な事です」
 タカフミはそう説明するが、サンデンスキー議員は納得がいかないという様子だ。
「何だと。それでは、この国は、いや『WNUA』側も、奴の手の上で戦争をさせられているような
ものではないか。しかし、その目的は一体何だと言うのだ?もう明かしても良いと思うが、我が
国の勢力が敗北するのは目に見えている。そして、いくら『WNUA』がこの国を戦後統治しよう
と、長きにわたる内戦状態に入ってしまうだろう。社会主義体制は崩壊し、この国は成り立たな
くなる」
 サンデンスキー議員の顔には暗い影が落ちている。彼らの話している言葉の意味は、アリエ
ルでも理解できた。
「ベロボグの奴も、そこまで全て想定しているはず。もしや、それ自体が目的なのかもしれな
い」
 リーがそこに口を挟んだ。
「奴の計画を止める為には、戦争の終結が欠かせない。奴は戦争を起こさせる事によって、目
的を果たそうとしている」
 サンデンスキー議員の目の前に立ち、リーはそう言ったのだが、
「だが、奴の目的が分からん。そこにいる娘を、ベロボグは何の為に利用しようとしているの
か?それと戦争が一体何に結びつくのかが分からない」
 リーはアリエルの方を向いた。アリエルはこの場でどうしたらよいか分からない様子しか見せ
られなかった。
「ベロボグは、アリエルの他にも、何人かの娘を持ち、『能力者』の兵士として実際に手先として
使っている。奴は、優秀な能力者を集め、また兵士として使っている。能力者無くして、彼のテ
ロ攻撃は成り立たなかった」
 それは、シャーリやレーシーと言う、実は自分の姉妹達だった者の存在だ。アリエルは顔に
シャーリ達の顔を浮かべた。
「そして、能力者は、ベロボグの奴に対して、絶対の忠誠を誓っている。それには、確かな計画
の後の何かがあるからだ。それは、恐らくこの世界をも揺り動かすほどのとてつもないもので
あるのかもしれない。だからこそ奴らは、ベロボグに対して絶対の忠誠を誓う事ができるのだ
ろう」
「それは、一体何だと言うのかね?君」
 サンデンスキー議員は、そののっぽの身長からリーを見下ろして言った。
「『ジュール連邦』を崩壊させ、ベロボグの組織がその後に君臨する。それは革命だ。戦争の
後には、必ず新しい体制が作られる。ベロボグが狙っているのは、もしやベロボグ自身の創り
出す国か?」
 タカフミがリーに向かって言った。
「『WNUA』が統治を始めるよりも前に、自分達がこの地に乗り込んでくれば、ベロボグの組織
力からしても可能だろう。奴はこの『ジュール連邦』に新しい国を建てようとしている。しかも、能
力者からなる国だ。奴は革命を起こし、伝説を創ろうとしている」
「その為に、彼は私達を利用しようと?」
 話の中にアリエルが割り入った。
「ああ、そうだろう。君のお父さん、ベロボグは、自分が生み出させた娘を中心にして、この世
界に新しい伝説を作るつもりだ。革命は戦争の後に起こる。意図的に戦争を引き起こすだけ
の力が彼にはあった」
「そんな事ならば、すぐにも総書記に伝えなければならない」
 サンデンスキー議員は声を上げた。
「戦争を止めさせるお考えですか?」
 タカフミはそのように言ったが、
「降伏し、『WNUA』と共にベロボグ達と戦う決意を固める。そんな事を総書記や閣僚が認める
とは思えない。何しろ、この国の今の体制ではな」
 サンデンスキー議員が発した言葉は、確かな言葉だった。リーもタカフミも、その事について
はすでに承知な様子だったが、
「だが、あなたの言った通りで無いと、この国は崩壊し、ベロボグに支配される事になる」
 リーはそのように言って、サンデンスキー議員に反論する。彼は毅然たる態度で彼に言って
いた。
「総書記には話してみよう。だが、馬鹿げた考えと思われるかもしれない。何しろ、総書記の判
断では、この国は最期まで戦う構えだ。この国会議事堂が陥落しない限りは戦争の敗北を認
めない」
「それって、私の父が全て仕組んだ事なんでしょう?それでも、戦争を続けるんですか?」
 アリエルが溜まらず間に入り込む。
 サンデンスキー議員は、自分の前の前に現れた、まだ年端もいかないような娘を、のっぽな
身長から見下ろして言った。
「陰謀を示す証拠が無い。宣戦布告をしたのは『WNUA』側の方であって、我が国ではないの
だ。『WNUA』は我が国の社会主義体制を徹底的に破壊する構えである事は分かっている。
今までの静戦が爆発してしまった以上は、この戦争はどちらかが敗北しなければ収まらない」
 サンデンスキー議員の言葉は、アリエルには冷酷な言葉のように聞こえた。彼女には政治の
事も、国際情勢の事も分からない。ただ、戦争と言う言葉と、それに伴う犠牲の事は理解でき
る。
「私が、生き証人です。私が証言すれば、戦争の原因が、父にあると言う事は明らかなんでし
ょう?私が証言をすれば、戦争を止められるはず」
「いいや、『WNUA』側は君の存在を認めない。そもそも私達はそんな目的のために君をここ
に連れてきたわけじゃあないんだ」
 リーがアリエルを遮って声を発した。
「私達はまず君を安全に保護させる事、そして、『ジュール連邦』総書記にベロボグの陰謀の存
在を知らせる為に、君をここに連れてきた。君が生き証人と言ったのは間違いじゃあないが、
戦争はすでに始まってしまって、それを我々に止める事は不可能だ」
「戦争が勃発するのは目に見えていた。問題は、それをこれ以上悪化させない事にあるんだ
ぜ」
 リー、そしてタカフミが次々とアリエルに向かって言ってくる。
 その言葉が、アリエルにはとても残酷な言葉のように思えた。彼らは、ただ戦争を傍観してい
るだけで、自分をここに連れてくるだけなのか。例え、地上にある街が火の海になったとして
も、彼らは動かないつもりなのだろうか。
「ともかく、総書記と話そう。私から取りはからってもらう」
「ええ、よろしくお願いします」
 タカフミはそう言って、サンデンスキー議員に向かって頭を深々と下げた。それが彼の国の礼
を示す姿である事は、アリエルはどこかで知っていたが、アリエルは同意しかねた。
 次々に連れ回された挙句、次はこの『ジュール連邦』の総書記に会う事になるとは。
 アリエルは知っているネットワーク上で、この『ジュール連邦』の総書記ヤーノフは、他国から
多大な誹謗中傷を浴びせられている。
 この国の総書記は独裁者。アリエルはそう先入観を持っていた。
 だが、サンデンスキー議員が部屋から皆を伴って外へと出ようとした瞬間、突然、部屋が真
っ暗になった。
 地下室でいきなり照明が落ちたものだから、その場にいた者達は不意を突かれ、驚かされて
しまう。
 部屋の外が騒がしくなった。
「一体何だ?何が起こった?」
 サンデンスキー議員の声が響く。
「議員!声のする方にいらしてください。絶対に離れないように!」
 暗闇の中でそう聞こえてくるのは、議員の警護担当であるらしい。
「停電か?攻撃が始まったのか?」
 タカフミの声が聞こえてくる。
「いいや、そうとも思えない。もし空爆があるならば、戦闘機の接近の連絡があるはずだ。だが
これは、突然起こった」
 そのように聞こえてくる議員の声。彼の周りを取り囲む警護の者達の足音も聞こえてくる。
「ここは、シェルター内部だぞ。独立した電源は無いのか?非常灯は?」
 リーの冷静な声が聞こえてくる。アリエルはとりあえず彼の近くに寄る事しかできなかった。
「全てが一度にやられた模様です。電源も、無線機も全てダウンしています」
 誰かの声が聞こえてくる。その言葉に、すぐにリーの声が上がった。
「我々の組織のアジトで起こった出来事と同じだ」
「電磁波攻撃か?ここは、国会議事堂の地下シェルターだぞ。電磁波攻撃にも対策は無いの
か?」
 タカフミがそのように言葉を返す。
「何十年も前に作られたシェルターだ。この国の防備など、所詮はそんなものさ」
 更にサンデンスキー議員の声も聞こえてきた。彼らは一か所に固まり、動こうとはしていな
い。
「これはベロボグの組織の攻撃だ。奴は、首都攻撃を狙っていた。狙いはこの国会議事堂であ
るかもしれない」
「では、総書記が危ないな。彼は今どこにいるんだ?」
 サンデンスキー議員がすぐにリーの言葉に判断を下す。
「最後の連絡では執務室にいらっしゃるはずです。そこからは動いていないはずです」
 護衛官らしき、アリエルの知らない声が聞こえてきた。
「無線がダウンした以上、直接行って安全を確認した方が良い。ベロボグの狙いは総書記であ
る可能性が高い」
 リーの冷静な言葉が響いたが、その直後、どこからか激しい爆発音が聞こえて来て、シェル
ター内は揺り動かされた。
「一体、何が起こっているんだ?」
 議員の声が響き渡る。だが周囲は暗闇のままだ。続けざまに何回も爆発が起こる。
「分からないが、ベロボグの部下の攻撃に遭っていると見て間違いありません。急いでヤーノフ
総書記の安全を確認しなければ!」
 タカフミの声が響き渡る。
 周囲が真っ暗闇であり、アリエルには何をどうしたら良いのか、さっぱりと分からなかった。た
だ分かる事は一つ。自分が恐ろしさに負けそうになっているという事だった。
 周囲には自分が頼る事ができる人間もおらず、ただ一人、その恐怖に押しつぶされそうにな
っている自分がいるだけだった。

(ペンティコフによる、電磁波攻撃は成功。レーシーにもダメージは無く、先発部隊が地下シェ
ルターに侵入することに成功しました。お父様、あなたの計画は順調に進んでいます)
 シャーリからの連絡を聴きながら、ベロボグはすでにある場所へと潜入していた。
 ステルス戦闘機状態から、彼はすでに人の形を取り戻していた。彼の身体はまだペンティコ
フの電磁波攻撃に耐えられるものではなかったから、彼の攻撃が行われた5分前には射程外
である3km離れた場所にいたが、攻撃を確認した後で彼は直行した。
 電磁波攻撃は《ボルベルブイリ》の首都中央部で炸裂し、あらゆる通信や、回路を麻痺させ
た。ベロボグ達の持つ装備は、既にペンティコフの能力に耐えられる設備を備えている。ベロ
ボグ自身はそのアップロードに間に合わなかったが、レーシーは強化されており、ペンティコフ
の電磁波攻撃に耐えられる。
 彼女の体内に内蔵されている通信機を使って、シャーリは逐一連絡を入れていた。
 ベロボグは地下水路を進みながら目的地を目指す。目指しているのは国会議事堂の地下シ
ェルターだ。ベロボグの信奉者はすでに、『ジュール連邦』政府内にも大勢いる。中から手引き
をされれば、この国の国会議事堂の地下シェルターなど、簡単に侵入する事ができるのだ。
 『ジュール連邦』の防備などたかが知れている。特に軍事開発には力を注いでいても、技術
的な面で、大きく西側の国に劣る。ベロボグが手に入れている技術力の前には容易に陥落す
る事だろう。
(お父様、目標は執務室から動いていません。このまま捕らえますか?)
 シャーリからの連絡が更に入る。だが幾らこのまま簡単に偉業を成し遂げる事ができようと、
ベロボグは少し考える。目標の存在の大きさを考えれば、このままシャーリ達をけしかけるの
は礼儀に反すると言うものだ。
「いいや私が行くまで待て。だが、決して目標を見失うな」
(承知しました、お父様)
 ベロボグは先を急いだ。レーシーの能力を吸収しているおかげで、人間離れした身体能力を
発揮し、地下水道を一気に走っていく事ができる。
 目標は間近に迫っていた。

「何が起こっているのよ!車が、突然動かなくなったわ!」
 セリアが叫んでいた。フェイリンは必死になってアクセルを踏みこんでいたが、車は動くような
気配がない。
「駄目よ。まるで駄目になっちゃった。あなたが軍から貰った携帯電話も通じない?」
 フェイリンが乱暴に車のアクセルを踏んでも無駄だった。車は少しも動こうとはしない。
「こっちも駄目。これはわたし達が、リーを追いかけていた時に起こった現象と同じよ。全部の
電気回路を持つ製品がやられるの。電磁波攻撃よ」
「こんな街の真ん中で?」
 フェイリンが声を上げ周囲を見回す。ジュール連邦国会議事堂の周辺を囲む堀はひっそりと
しており、通りには一般市民の姿は見られなかったが、何やら国会議事堂を警備している警備
員達の姿が慌ただしい。
「『WNUA』側の総攻撃?わたしにも内緒で?そうは思えないわ。この現象はちょうど、あのリ
ー達の組織のアジトに行った時と同じものよ。多分やったのは、ベロボグの連中に違い無い
わ」
「テロリストが、国会議事堂を攻撃したって言うの?」
 フェイリンがおびえたような声を発した。
「ええ、そうよ。ただ事じゃあないわ。すぐに軍に連絡してやりたい所だけれども、電磁波攻撃
にもやられていない携帯電話を使うわよ」
 そう言いつつ、セリアは国会議事堂の堀に止められた車の中で、一台の携帯電話を手にし
た。


Next→
6


トップへ
トップへ
戻る
戻る