レッド・メモリアル Episode24 第9章
あれからしばらくの時間が経った。
アリエル・アルンツェン、とその義母、ミッシェル・ロックハートは、もはやその名前ではなくなっ
てしまっていた。国籍も変え、今では『ジュール連邦』からも遠く離れた国の山荘で暮らしてい る。
「じゃあね、義母さん。今日も行ってくるから」
朝、そう言って山荘から出てきたのは、金髪の髪に染め、ライダースジャケットに身を包ん
だ、新しい人生を歩みだしたアリエルだった。彼女は、新しい自慢のバイクのところへと向か う。
黒いボディを持ち、常にぴかぴかに磨かれたそのバイクは、アリエルの新しい宝物だった。こ
れも、あのリー達の組織という人々が、わざわざ気を使って用意されていたものだ。
「ええ、気をつけなさいよ。日が暮れる前までには帰ってきなさいよ」
と、義母は言ってきた。
「ええ、分かっている」
そう言って、アリエルは黒いヘルメットを被る。ライダースの服をまとった彼女は、また一段と
大人になっていた。
アリエルはバイクを疾走させる。都会からは離れた森の奥に彼女達は住んでいる。それは以
前まで住んでいた『ジュール連邦』の山荘に似ていた。
だが、気候は違っていた。ライダースを着ていれば結構暑く、また樹木の種類も違っていた。
まだ少し慣れない異国の地。アリエルはデリバリーの仕事を始めており、バイクで過疎地帯
にまで都会から荷物を運ぶ仕事をしている。
バイクが好きだった自分、高校に通っていた時の自分、彼女はそれを取り戻していた。
それは誰にも奪えることができなかった。
そして、アリエルはそれを取り戻した。
もう、二度と失うことがない、アリエルとミッシェルの親子の絆、そして平穏な生活。
世界がどのように動いても、それは変わることはない。
アリエル達は、その幸せを取り戻したのだ。
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